地域観光を促進するサイクルツーリズム・自転車旅の魅力

自転車旅

近年、環境と健康によい交通手段として自転車が見直されています。日本では、2016年12月に自転車活用推進法が施行されて以後、政府は地方自治体や企業、民間団体などと連携し、自転車の活用を推進しています。そして、日常、自転車が使われることはもちろん、「サイクルツーリズム」と呼ばれる自転車を用いた旅も日本各地で数多く行われています。また、本場ヨーロッパでは古くからサイクルツーリズムが親しまれています。本記事では、サイクルツーリズムの概要とその魅力についてご紹介します。

現代日本のサイクリングとエコロジー

日本では1970年代に一大自転車ブームが起きました。当時の日本の自転車業界では、中高生向けに『ブリジストン・ロードマン』といったスポーツ車や、その上位モデルの『ユーラシア』といった自転車旅行向けのサイクリング車が人気で、主人公が日本一周に挑むマンガ『サイクル野郎』も人気を博しました。

またこの時代は、エコロジカルな暮らしを志向する考え方がアメリカ西海岸から入ってきた時代でもあります。1971年、アメリカでは、自転車を利用し大気汚染等を防止しようとするバイコロジー(バイクとエコロジーの合成語)運動が提唱され、のちに日本にも波及しました。1970年代は、自転車で移動することが健康や環境によいとの認識が広がった時代でした。

こうした自転車を含めたエコロジカルなライフスタイルが、より強く社会全体に必要とされ、進化したのが現代です。菅総理大臣は2020年10月26日の所信表明演説で、「2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指す」と宣言しました。自転車はエコロジカルな乗り物で、ガソリン車と異なり、どれだけ走っても二酸化炭素ほか温室効果ガスを出すことはありません。こうした特性は、日本政府の目指すカーボンニュートラルな社会の実現へという方針にも合致しています。

サイクリングの種類

サイクリングには大きく分けて3つの種類があります。それは、レクリエーション・サイクリング、ツーリング、そしてサイクル競技です。このなかでサイクルツーリズムが主に対象としているのは、レクリエーション・サイクリングとツーリングです。

レクリエーション・サイクリングで代表的なのは、観光地でレンタサイクルを借りての街の散策です。地域の観光地巡りやグルメを楽しむなどの目的で行われます。そのため、普段自転車にあまり乗る機会がないサイクリング初心者でも気軽に楽しむことができます。

一方、ツーリングは、サイクリング中級者向けです。自転車にキャンプ用品を積み、日帰りや数日間出かけます。電車やバスなどの公共交通機関に自転車を分解して携行する「輪行」をする人もいます。これは70年代に流行した自転車での日本周遊旅行に近い形です。

いずれもコロナ禍で話題となった、いわゆる近隣の地域に旅をする「マイクロ・ツーリズム」との親和性が高いものです。自転車でのサイクリングであれば、「3密」を回避しながら気軽に旅に出ることができます。

最近は、電動自転車の技術革新もサイクリングを後押ししています。内蔵バッテリーの航続距離が100kmを超えるものもみられ、丸一日のサイクリングにも対応できるようになってきました。また、より軽く扱いやすい、車体重量が20kgを切るものも発売されるようになっています。このように性能が向上している電動自転車は、移動手段の一つとして人気が高まっており、自転車ビギナーでも遠出をしようと思ったときには心強いアイテムになります。

サイクリングがもたらす効果・サイクルツーリズムの推進

サイクリングは、その等身大のスピード感に価値があります。たとえば、地方の小さな商店街を走れば、その地域の店の人や商品を見て、雰囲気を味わいつつ、先へ進むことができる。よりゆっくり見たいと思えば、自転車を押して歩くなど、心地いいスピードに自在に変えることができます。このように、速さを調節しながらそのときどきに見る土地の風景や人の顔は、車や列車の移動では味わいがたい魅力です。

また、自転車に乗ることそのものが運動となり、生き生きと楽しむことにもつながります。平成24年度に全国の27都市で実施した自転車を活用するメリットを調査したアンケートによると、自転車を日常的に利用する理由の上位の回答として「運動不足解消になり健康によい」が42%、「気分転換・ストレス解消になる」「エコ活動に取り組みたいから」との意見もそれぞれ17%、9%を占め、健康や環境に関する意識の醸成にもつながっていることがわかります(参照元:第1回自転車の活用推進に向けた有識者会議『自転車の活用に関する現状について』P4)。

さらに、Aという土地とBという土地、それぞれ異なる土地の間を自らの動力で移動することで、それらの土地がもつほんのわずかな変化にも気がつくことができます。

このようにサイクリングを通じて離れた土地を行き来する旅であるサイクルツーリズムを推進すべく、サイクリングルートの整備も進んでいます。2019年、政府はナショナルサイクルルートとして「つくば霞ヶ浦りんりんロード」「ビワイチ」「しまなみ海道サイクリングロード」の3つを指定しました。ナショナルサイクルルートとは、国内外に積極的にPRを行い、サイクルツーリズムを推進すべく国が指定する、ソフト・ハード面で一定の基準をクリアしたサイクリングルートです。

そして、特にサイクリングルートとして指定されていない道でも、都市部では、自転車のレーンを青く塗り、あるいは矢羽根を描くなど、自転車が走りやすい環境づくりも進んでいます。また、サイクリングを楽しみたい人を対象とした宿泊施設も出てきています。たとえば、静岡県のコナステイ伊豆長岡、しまなみ海道では大三島のWakka、2021年4月に開業予定の生口島のSoil Setodaなどです。

このようなサイクリスト向けのサービスを備えた施設のおかげで、国内ではサイクリングの旅に出やすくなっています。また、こうしたサイクリスト向け施設は、将来的に外国人観光客の誘客にもつながると期待されています。

サイクルツーリズム・自転車旅のすすめ

さまざまなサイクルフレンドリーな施設やサイクリングルートができても、都市部以外での自転車旅ではいくらか困ることが出てくることもあります。しかし、それは自転車での旅を通じてつぶさにその土地を見ようとした証拠でもあります。そのときは少し大変でも、時間が経つにつれ深い思い出として刻まれていきます。記憶に残る旅は素敵なものです。

自転車で、あえてスピードを落としてその土地を体験していく「サイクルツーリズム」には、あらかじめ準備されたものを確認しに行く旅のみならず、地域に飛び込み、人とつながり、そしてゆったりとした雰囲気にじっくりと浸る旅の醍醐味も味わうことができます。思い立ったが吉日。自転車旅に出かけてみてはいかがでしょうか。

【転載元】地域観光を促進するサイクルツーリズム・自転車旅の魅力

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Life Hugger 編集部

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