銀座のど真ん中に農園が!?白鶴酒造が食育のためにも取り組む自社開発酒米の栽培とは

日本酒や焼酎などさまざまなお酒を手がけている、神戸市に本社を置く白鶴酒造株式会社。銀座にある東京本社のビルでは、なんと屋上に農園があり、そこで収穫した酒米「白鶴錦」のみで仕込んだ商品を毎年発売しています。

銀座という大都会に農園を持つというインパクトだけでなく、収穫米だけでお酒を作っているという取り組みは前代未聞!6月15日に、白鶴酒造株式会社の社員の方達による田植えが行われたので、取材しました。

2007年からスタートした天空農園プロジェクト

白鶴酒造株式会社東京本社があるビルは、東銀座駅から徒歩1分、銀座駅からも徒歩5分というまさに銀座のど真ん中にあります。

ビルの屋上にある「白鶴銀座天空農園」は、そもそもは「日本の首都・東京の中心とも言える銀座から、日本酒文化の情報発信をしたい」という思いからスタートしました。この想いから2007年にプロジェクトを立ち上げ、自社開発酒米「白鶴錦」の栽培を始めたそう。それまで屋上は室外機などがただ立ち並んでいる、なんの変哲もない場所でした。

天空農園プロジェクトのチームリーダーである山田亜由美さんは、「当初は夜も明るい銀座で、本当にお米の栽培なんてできるのかという声もあった」と言います。実際に最初はプランター100基でスタートし、2008年にはビル屋上を大改修して田んぼを造成したものの、お米の栽培はなかなかうまくいかなかったそう。そのためお米の品質向上を展開していきました。そして2013年から、この農園で収穫した白鶴錦だけを使った純米大吟醸酒「白鶴 翔雲 純米大吟醸 銀座天空農園 白鶴錦」を販売することができているそうです。

農家顔負けの慣れた手つきで行われた白鶴酒造社員による田植え

例年は一般客や留学生などに田植え、稲刈りを体験してもらっているそうですが、昨年からはコロナ禍ということもあり、社員で田植えを実施しています。今年は総勢30名ほどの社員に加えて、ゲストに「2021 Miss SAKE」の御三方が田植えを行いました。

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田植えの前には、事前に田植えマニュアルとして苗のかたまりのほぐし方や土の中への押し込み方などを予習。しっかりとした講習ではなく念のための確認作業という形で意外にもさらっとした説明でした。さすが、すでに何年も田植えをやってきている白鶴酒造さんです。

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屋上に移動して、いざ田植えがスタート!社員の中には、今回で3年連続参加だという方もいて、本当の農家の方のように慣れた手つきで苗を植えていく様子がうかがえました。

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実際に農家さんが行う田植えと同様に、田んぼ内では苗を均等に植えていく必要があります。田んぼの両端ではロープを引っ張る方もいて、ロープに書かれているビニールテープの印に合わせて植えていました。

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植えた苗を踏まないように後ずさりしながら、1列ずつみんなが同じペースで行っていきます。とても体力のいる作業ですが、「もっと土をならしてくださいねー」「ちょっと曲がっているよ!まっすぐね、まっすぐ!」とみなさんがお互いに声を掛け合いながら、明るく楽しそうに田植えをしているのが印象的でした。

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そうこうしているうちに、わずか1時間足らずで予定されていた箇所の田植えがすべて完了。終わってみると、キレイに植えた苗の列ができています。プロ顔負けのスピードと完成度でビックリです。

田植えをしてからが米作りの本番

今回行った6月の田植えの後は、8月に出穂、10月に稲刈りとはさがけ、11月に脱穀を行い、翌年6月に収穫した酒米から造った新酒が世に出て行きます。田植えを終えたばかりの社員さんにお話を聞いてみると、なんと今回の田植えは一連の農作業の中でもかなり楽なほうなんだとか!

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「田植えの後は無農薬で育てるからこそやらなくてはいけない田んぼの管理が始まります。定期的な雑草取りや虫除けはもちろん、そして都心と言えどもカラスや小鳥が飛んできて稲を食べてしまうこともあるので、その対策もしなくてはいけません。稲は風に弱いので、台風の時期にはロープとネットで風除けもします。それが本当に大変で、毎日社員同士で声を掛け合って担当しています。田植えをしたから終わりではなく、ここからが米作りのスタートなんです。」

一般的に現在の農家さんは作業効率化のために、機械を使っていることが多く、手作業で田植えや収穫を行うことはほとんどないそうです。そのため、天空農園で行っている農作業はむしろ時代の逆を行く昔の農作業と言えます。そして、この大都会の銀座という立地で原始的な農作業を行うからこそのギャップはとても面白い!日本の酒造メーカーとして唯一無二とも言える魅力を引き出しているとも言えるでしょう。

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さらに詳しくお話を伺ってみると、ビルの屋上での栽培はさまざまな点で苦労が多く、やはり一筋縄ではいかない苦労があると言います。まずは土の問題。一般的な稲作では約60cmもの土の深さが必要になります。しかし屋上の栽培では重さに制限があるため、どんなに厚くても15cmほどの深さまでしか土を敷くことができません。そのため、稲に必要な栄養を行きわたらせるために緑化用の軽量土を使用するなど一般的な稲作にはない工夫を凝らしてきたそうです。

また、ビルの屋上に降り注ぐ直射日光も課題に。昨今は都心でも酷暑になることが多いように、真夏の時期には水温が40度を超えることもしばしばあるため、水温の調整やこまめな水の補充にも苦労していると言います。一度水を抜いてから水温を上がらないようにするなど、都会ならではの対策もしていると教えてくれました。

屋上緑化に取り組むという社会的意義も

白鶴銀座天空農園は大小合わせて7区画ある田んぼで、110平方メートルの作付面積で栽培できる株数は約1700株。“1700株”と聞くと、さぞ大量の酒米を収穫できるのだろうと思いがちですが、実際に日本酒として仕込むとなるとわずかな量にしかなりません。

実際に、昨年天空農園で育てて収穫した酒米は籾付きで50kgほど。その酒米のみで仕込んだ新酒は500ml入りでわずか40本でした。6月からたったの40本限定で銀座三越や松屋銀座などの周辺施設で販売されています。

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「こんなに少ない量を販売するなんて意味があるの?」と、正直な疑問をぶつけてみたところ、山田さんからはさまざまな答えが返ってきました。たくさんお酒を作って販売する目的であれば、非常に非効率とも言える作業ですが、白鶴酒造がこの天空農園でお米の栽培をしているのは、商品化だけが目的ではないようです。

まずはお得意様や消費者への情報発信。特に、お得意様が東京本社に来社される際には、屋上農園を見てもらい、自社の取り組みに興味を持ってもらう狙いがあるそうです。

屋上緑化の取り組みという、環境配慮の側面もあります。お酒は自然の恵みである米と水を原料に、自然環境の中で生きている麹菌や酵母菌などの微生物の力によってできあがるもの。企業としての社会的責任(CSR)として、未来に向けた持続的成長を目指すべく天空農園を大事にしています。

近隣の小学校を対象にした食育の授業

さらに食育にも力を入れている天空農園。2009年からは近隣にある京橋築地小学校の子どもたちを対象に、天空農園に招待して食育の授業の一環として田植え体験や稲刈り体験をしてもらっています。

「お米作りやお酒作りについてお話するだけでなく、実際に収穫したお米をプレゼントもしているんですよ。ただ、子どもたちが田植えを行った田んぼはあとで社員がこっそりと手直しを行うこともあります(笑)。毎日食べているお米はどうやってできるのか、お米がどのようにしてお酒になるのかなど、実際に自分たちが田植えや収穫をして学べることはとても貴重な食育になっていると思います」(山田さん)

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都会育ちで田んぼなど見たこともない子どもたちにとっては、近所で田植えや収穫ができるのは非日常でとっておきの体験に。天空農園は自社のお酒作りに必要な機能としてだけではなく、近隣の子どもたちにとって一生心に残る思い出の場所にもなっていくはずです。

天空農園で収穫した「白鶴錦」は9年連続で2等を獲得

天空農園で収穫した「白鶴錦」は2007年に品種登録受理された酒米。「山田錦」の母にあたる「山田穂」と「渡船2号」を独自開発し、70年ぶりに交配させて誕生したため、「山田錦の兄弟米」という位置づけになっています。

毎年11月には米穀検査が行われ、昨年は9年連続の2等を獲得しました。これは東京都の登録米ではない白鶴錦としては最高ランク。社員さんたちは、毎年のこの米穀検査の結果で日々の苦労が報われ、翌年もさらにいいお米を作っていこうという意欲が湧くそうです。

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そして収穫された稲は、玄米から精米歩合50%まで磨いた後にお酒造りがスタートします。神戸にある蔵に持って行き、わずか15kgほどの白米を手作業で仕込んで、約2ヶ月かけて大切に醸造。絞り機からお酒が出てきた瞬間にホッとするのだとか。

「お酒に必要なお米作りは1日にして成りません。日々の活動をSNSで発信しているので、天空農園でどのようにお米ができていくのかを日本の人だけでなく、世界中の人に知ってもらえたらと思っています。銀座のど真ん中でお米作りができるわけがないと思っている人にこそ見てもらいたいですね」(山田さん)

銀座から世界に向けた日本酒文化の情報発信として、企業が取り組むべきCSRとして、そして食育の一環として。白鶴酒造の天空農園が持つ存在意義は、さまざまな方面にポジティブな影響を与えているのではないでしょうか。

【ウェブサイト】白鶴酒造株式会社
【ウェブサイト】白鶴銀座天空農園
【ウェブサイト】白鶴 翔雲 純米大吟醸 銀座天空農園 白鶴錦

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Life Hugger 編集部

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